人を育てる 第33回 [2003/06/05]

勉強にしろ、遊びにしろ、雰囲気を作ることが教育

 ラジオのテレフォン人生相談をしていてつくづく感じるのは、言っていることは正しいのだけれども、愛情がないという親の多いことである。子供のことで電話してくる親は多い。たいてい子供に言っていることは正しい。しかしその裏付けになる愛情が欠如している。
 親も人間だから愛情が不足しているのは仕方ない。しかし子供のことで相談してくる親は愛情不足でなく、愛情欠如なのである。
 ある程度の年令になれば何が正しいことであり、何が間違ったことであるかは、親に聞かなくても子供が知っている。正しいことなどは誰でも言えるのである。
 子供の心を育てない愛情欠如の親とはもちろん過干渉の親であり、また逆に放任の親である。
 誰でも分かっている様な正しいことばかりを言う過干渉の親とは、子供が寝ているときに子供を起こす。塾があるからである。子供は眠い。そこで「ほら、熱いお茶をあげるから、飲みなさい、早くしないと塾に遅れるわよ」と子供を急かす。或いはお茶もあげないで塾に行かなければいけない時間に寝ている子供を怒る。
 放任の親は子供が寝ていようが、遊んでいようがかまわない。子供をおこしてお茶をあげることなど考えもしない。親子ともに無表情。
 では子供の心を育てる親はどういう親であろうか。子供が塾に行く必要があると思えば、寝ている子供を起こす。眠いのに起こされた子供は不機嫌である。母親はそのまま黙って熱いお茶を横においておく。或いはその子の好きな冷たい牛乳を黙っておいておく。子供はそこに親の愛情を感じて、「行こうか」という気持ちになる。
 そして子供が北風に吹かれながら塾から帰ってくる。その帰ってきた時に、熱いうどんを作って待っていてあげる。
 勉強にしろ、遊びにしろ、雰囲気を作ることが教育では大切である。子供にその気にさせることが子育てである。そしてそれが一番難しい。子育てがうまく行かないのはここが重要だからである。情緒的に未成熟な親でも、情緒的に成熟した親でも、言うことはあまり代わりがない。
 勉強でなくても同じである。「ケーキでも作ろうか」と母親がいう。その時にケーキでも作ろうかと言う雰囲気を作ることが娘の教育に大切なのである。その雰囲気が出来たときに時には娘も喜んでケーキを母親と一緒に作る。感情を共有できる時に雰囲気が出来て、関係はうまく行き、心が育つ。




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加藤諦三、加藤諦三研究室