心理的健康について 第33回 [2001/08/14]

第7章 神経症者の要求の特徴4(5)

 心理的に健康な人は自分がなれるものに満足する。心理的に健康な人は自分に与えられた能力を使う。
 心理的に病んでいる人には、「こう」ならなければ満足できないというものがある。しかし実際の自分はその様になる能力が無い。あるいは本質的に自分の適性に、それは向いていない。それにもかかわらず、神経症者はその様な地位に向けて強迫的な努力をすることになる。
 おそらく大人になっても小さい頃の挫折を受け入れられないでいるのであろう。
 なんとかして自分を嘲笑したものを見返してやりたい、なんとかして親の失望を取り返したい、そんなものが無意識の領域にあるに違いない。何が原因かは人によって異なるであろう。或る人は初恋の人から受けた心の傷かも知れない。初恋の人が自分より優秀な人に心を移したことによる心の傷かも知れない。ある女性は恋人が、自分より美人の人に恋をして自分が失恋したからかも知れない。
 また別の人は親が自分の成績を見て深い失望のため息をついたことによって受けた心の傷かも知れない。自分の臆病に対して仲間があざ笑った時の心の傷がいつまでも無意識の中に残っているのかも知れない。
 神経症者には、見返してやりたいと言う復讐的な気持ちが最初にあるから、現実の自分には不可能としか考えられない様な大成功を求める。見返すために必要な成功、それが自分に対する非現実的な期待である。もともと無理なことを望んでいるのだから出来るわけがない。そしてそれができないから悩んでいる。現実の自分を無視してしまうのはまず見返してやりたいと言う復讐的な気持ちが無意識の領域で先行するからである。



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加藤諦三、加藤諦三研究室