心理的健康について 第31回 [2001/07/27]

第7章 神経症者の要求の特徴4(3)

 心理的に病んでいる人にとって実際の自分は軽蔑の対象でしかない。責める対象としての自分なのである。もう一方に愛される自分、人々から尊敬される自分がいる。それが理想の自分である。この理想の自分と実際の自分の緊張関係から強迫性が生まれる。
 不安と強迫性との関係を頭においておくことは大切である。つまりそれを頭においておけば、自分が何かに強迫的になった時、自分の中にどのような不安の原因があるのかと反省することが出来るからである。自分には自分が気がついていない何があるのだと反省してみることが出来る。何で自分はこんなにまで名声を追及するのかと言う反省である。
 心の底で知っている実際の自分と、理想の自分とがどれくらいかけ離れているかを反省する機会となるからである。
 それでないと、富や名誉に強迫的になりながら、いつまでも富や名誉を強迫的に追い求め、ついに現実の自分の人生に満足することが出来ないままで人生を終わることになる。
 強迫的になっている人の間違いは、「自分はこんなに頑張っているのに幸せになれない、だからもっと頑張らなければ」と思ってしまうことである。前後のかかわり合いを見ていない。状況を見ていない。自分のしていることが理解できていない。
 例えば自分は花束を女性にプレゼントしているつもりでいるが、実は骸骨をプレゼントしているということがある。だから女性がこちらを向かないで逃げていく。すると「何でなんだ、俺がこんなに努力しているのに」と叫び、苦しみ、悩む。
 なぜ思惑がはずれたかを反省していない。相手を見ていないから努力が生きてこない。相手が何を望んでいるかを考えない。自分の世界観だけで努力する。だから「こうなる」と思ってしたことが、「こうならない」。
 なぜなのだろうと考えないで、「もっと」同じことをする。さらに努力をする。もっと大きな骸骨をもっとプレゼントする。
 例えば気に入られたいと思って自分の本当の感情を表現しないとする。本当は「会いたい」のに、「会いたい」と言うと相手に軽く思われるかと思って「会いたい」と言わない。「会ってやる」と言う態度を示す。
 逆に迎合する態度が相手を遠ざけてしまっているのに、さらに迎合する人もいる。
 もしかすると相手は本当の感情を表現できるような親しい間柄を望んでいたのである。相手はそうしたよそよそしい態度に淋しさを感じる。



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加藤諦三、加藤諦三研究室