「驚異的な働き手」は「あなたの生き方がおかしい」と誰かに忠告されてもそれをなかなか聞き入れようとはしない。このようなバランスを崩した生き方の愚かさは昔から色々の人によって注意をされている。例えばヒルティーである。
「たとい人が全世界をもうけても、自分の命を損じたら、なんの得になろうか」というマタイ伝を引用して、そのあとで「しかし、これほどしばしば世に起こることはない」 「註、ヒルティー、幸福論「一」、氷上英廣訳、白水社、84頁。 ヒルティー、幸福論「一」、氷上英廣訳、白水社、84頁。」と述べている。バランスを崩すことは、まさに心理的に傷ついた人が昔からよくおこす事柄である。
そしてこれらの人の悲劇は、人生途上における人間関係のトラブルだけではない。多くの人は人間関係のトラブルが原因で成功出来ない。しかしたとえ成功しても悲劇が待っている。その様な人は成功すると、人からちやほやされることだけが嬉しい。そこでその人の周りにはお世辞を言ってその人から利益を得ようとする心の卑しい人達ばかりが集まる。
その成功した人達は、自分はこれだけ皆に施しているのだから、きっと皆は自分のことを尊敬し、末永く自分に仕えるだろうと思っている。しかしその人が皆に施せなくなったときには潮が引くように人は去っていく。
そしてその時に「人は冷たい」と嘆く。しかし一般的に人が冷たい訳ではない。その人の周りにいた人が冷たいのである。その人は誠意のある人とはおよそ関係ない生活をしていたのである。ずるい人だけが集まるような生活になっていたのである。
バランスをとれた生活をしていればその人の周囲にも誠意のある人が集まったかもしれない。