心理的健康について 第79回 [2002/09/19]

第16章 真面目人間の挫折例(2)

第2節 き真面目な人と嫉妬妄想

 妻は些細なことを内心で真剣に悩み、夫は生真面目で四角四面な性格である。今まで夫に女性関係はなかった。しかし近所に幼馴染みの五十一才になる女性が居る。彼女はその夫の幼なじみの女性が気になる。
 その人と何があったと言うのではないのだが、その人が通ると主人はそわそわすると彼女は悩む。その女性が午前中パートに出るのだが、その時に彼女の家の前を通る。そこでその時間になると、夫は必ず窓辺に行って、「えっへん」と咳をして合図をすると彼女は思い込んでいる。この確信は彼女の内面奥深くに根を下ろしている。最近は向こうの方も気がついているとまで彼女は主張する。「主人は真面目なので本当に真剣になったら大変ですし、主人の前では気づかないふりして明るく振舞っていますけど、どのようにしたらよいかと」と悩み、一人になると落ち込んでしまう。
 「近所の噂になりかかったんです。私に対する態度は変りました。今まで買物に一緒に行っていたのに、近頃行きたくないと言うんです。」それは考えすぎと言っても承知しない。
「夫は彼女と気があってるものだから、」と言う考え方が頑固に固持される。夫の全ての行動がその女性にむけられたものと感じられて、彼女は惨めになってきた。
 夫が日曜日は出たくないと言った。そのことまでがこの女性との関連で考えられる。日曜日に自分と一緒に買物に行かなかったと言うことを自分の存在に対する蔑視と受け取ってしまう。また夫がその女性をより尊敬している現れと受け取る。私がそんな事はないと言ってもなかなか納得しない。
 「もしも、と言うことになったとき。肉体関係になってからでは遅い」と彼女は言う。それは杞憂に過ぎないと言ってももちろん承知しない。
 彼女は自分はみすぼらしいと感じている。その自己不全感が彼女の嫉妬妄想の源にある。
 若い頃彼女は自分はこの男性に値しないのではないかと言う不安を持ちながら結婚した。この自己不全感が彼女の生涯を通しての苦しみであった。そしてそれが更年期という時期に嫉妬妄想という危機的な様相を帯びて現れてきたのである。



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加藤諦三、加藤諦三研究室