心理的健康について 第64回 [2002/05/15]

第12章 行動と動機1(1)

第1節 人は何のために真面目にするのだろうか

 2000年5月1日に愛知県の高校三年生が主婦を殺した。殺人の動機は「人を殺す経験をしたかった」である。真面目な性格で成績優秀であったと新聞は報じている。日本経済新聞などは見出しに大きく「模範的な生徒」と書いている。
 当時の新聞には同級生の言葉が出ている。朝日新聞に出ているのを見ると「絶対にそんなことをする人じゃない」である。そして軟式テニス部で同級生だった少年は「よく休んだ僕よりもよっぽど真面目にやっていました」と言っている。
 その直後3日に同じく17歳の少年が刃物を持って福岡県でバスジャックをした。そしてその同級生がテレビで言っていたことは、「世の中にいないくらい真面目な人」であった。とにかく二人とも「信じられないくらい真面目な人」なのである。
 このように、この二人が、「模範的な生徒」として評価を受けていたという事は私達がいかに人を評価するときに行動だけを見て、その心の内を見ていないかという事である。

 人は何のために真面目にするのだろうか。小さい頃、人は周囲の人の好意が欲しい。ことに淋しい人は好意を得るために社会的に望ましいとされていることをする。
 社会的な大問題を起こす様な真面目な少年は、小さい頃周囲に良い子として受け入れてもらうためには、真面目であること、お行儀よく振舞うこと、周囲から無視されて面白くなくても騒がない等と言うことを学習したのである。
 それが「不思議なくらい問題のない子」と言われる人達である。それらの「良い子」は周囲から拒絶されるを恐れて、内面の怒りを抑える。その結果自分の意志を伝える能力のない子になる。



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加藤諦三、加藤諦三研究室